バドミントンのコートは「線で試合の前提が決まる空間設計」です。線はボールを弾く障害ではなく、入れるための味方であり、寸法やサービスエリアを正しく理解すると狙いの箱が広がります。この記事では、図で理解するための寸法とラインの意味を整理し、シングルス/ダブルスの違い、サービスの対角と足の条件、判定の原則、守備の基準位置と動線、さらにラインを使う配球と練習ドリルまでを連結して解説します。
読み終えた時点で「どこを狙えば安全か」「どこまで攻めて良いか」「線上はどう扱うか」が具体化され、次の練習からすぐ使える指標を持てるように構成しています。
- 線は着地が触れれば有効です。恐れず狙います。
- シングルスは内側サイドライン、ダブルスは外側です。
- サービスは対角。短い線を越え、奥の上限を出ないこと。
- ネットは中央がわずかに低く、角度設計に影響します。
- 守備の基準位置はセンター一歩後ろから微調整します。
バドミントンのコート図を読み解く基礎
最初に寸法と線の役割を図でイメージできるよう数値を整理します。暗記するための数字ではなく、配球の幅と守備位置を決める基準として使うのが狙いです。中央が低いネット、シングルスとダブルスで異なる有効幅、サービスの短い線と奥の上限を一体で理解しましょう。
表:寸法と線の意味(早見)
| 項目 | 数値・位置 | 対象 | 実戦での意味 |
| コート長 | 13.40m | 共通 | 縦の押し戻しで時間獲得 |
| シングルス幅 | 5.18m | 内側サイド | 外側ラインは無効(錯覚注意) |
| ダブルス幅 | 6.10m | 外側サイド | 比較基準。練習では意識切替 |
| 短いサービスライン | ネットから1.98m | 両種目 | 越えないサーブはフォルト |
| 長いサービスライン(単) | 最奥のバックライン | シングルス | 奥まで有効。深さで時間を奪う |
| 長いサービスライン(複) | 最奥手前0.76m | ダブルス | 混同禁止。単複で上限が違う |
| ネット高(中央) | 1.524m | 共通 | 直線球は中央ほど通しやすい |
| ネット高(ポスト) | 1.55m | 共通 | 端が少し高い。角度の微差に影響 |
注意:線は「入れるための境界」です。着地が線に触れたシャトルはインになります。線を避ける癖は配球の幅を狭めます。
ミニ用語集
- 内側サイドライン:シングルスで有効な左右の境界
- 外側サイドライン:ダブルスでの左右境界(単では無効)
- 短いサービスライン:サーブが越えるべき手前の線
- 長いサービスライン:サーブの奥上限(単は最奥、複は手前)
- センターライン:サービスコートを左右に分ける線
線は守りではなく攻めの味方
線上を「触れてもイン」と理解できると、端を使った逆を取りやすくなります。まずは線の内側5〜10cmを箱として狙い、成功率を可視化しましょう。
幅と長さの錯覚を正す
ダブルス幅の感覚でシングルスを打つとサイドアウトが増えます。練習ごとに幅の切替を宣言するだけでも錯覚が減ります。
ネット高の微差と角度設計
中央が低い前提を使い、直線的な球は中央寄り、クロスは接点を高めに確保して角度を作ると安定します。
図で押さえるサービスコート
対角配置・偶奇での左右入替・足の静止を図解イメージで結びつけます。線と足の関係が曖昧だとフォルトが増えます。
判定の原則を一本化
「着地が線に触れたらイン」「サーブ時の足はライン上を踏まない」。この二つを声に出してから始めるとミスが減ります。
サービスコートと対角の原則を図で確認する

サーブとレシーブは点の起点で、エリア理解がそのまま失点率を左右します。ここでは対角の原則、偶奇で変わる左右、足の静止と面作りを図のイメージで固定します。短い線の越え方と奥上限の使い分けを練習に直結させましょう。
手順ステップ:サーブ前チェック
- スコアの偶奇で立ち位置(右/左)を確定します。
- 両足はサービスコート内で静止し、ライン上は踏みません。
- 狙いの高さとコースを決め、面を先に作ります。
- ショートは低く速く、ロブは高く深くを徹底します。
- 打った後の初動を決め、次球へ備えます。
比較:ショートとロブ(狙いの図解イメージ)
- ショート:短い線越え50cm以内。前へ引き出す設計。
- ロブ:最奥手前50cm以内。時間を奪い立て直す。
Q&AミニFAQ
- Q: センターラインを踏んだら? A: サーブ時の足は踏めません。打球後の移動で修正します。
- Q: 偶数スコアのサーブ側は? A: 右から対角へ出します。
- Q: 浮くのを避けたい。 A: 面を先に作り、打点を10cm前へ。
対角配置で迷わない方法
「偶数右・奇数左」をルーティン化し、声に出して確認します。図の矢印を思い浮かべるだけで取り違えが減ります。
足と面の役割分担
足は静止、面は先に角度決定。直前の踏み替え癖はフォルトを誘発します。上体と面で微調整して情報を漏らしません。
レシーブの箱設定
ショートには前足一歩で届く距離、ロブには最初の一歩を後ろへ。返球はセンター基準でバック側へ少し外すと主導権を回収できます。
配置と動線:図から設計する守備位置と戻り方
守備の初期位置と戻り方は、エリア図から逆算して決めます。センター一歩後ろを起点に、相手の選択肢を二択に絞る配置を探ります。無駄な距離を削る動線が整うと、一本目の対応と三本目の得点が安定します。
有序リスト:基準位置を決める順序
- 相手の利き腕・得意コースを把握します。
- 自身の弱点側をカバーする角度で立ちます。
- 打球に応じた戻り位置を固定化します。
- 外したときの最短ルートを決めておきます。
- 前後の揺さぶりに備え、重心を低く保ちます。
- 狙いを声に出して一歩を早くします。
- 実戦速度で検証して微調整します。
ミニ統計(目安)
- センター復帰0.8秒以内で次球対応が安定。
- 対角クリアの着弾誤差±60cmで主導権維持。
- ネット前→後方は2歩で届く配置が理想。
戻り位置は「点」ではなく「箱」で考えると、相手の二択に常に間に合うようになります。箱の中心を踏んで止まらないのがコツです。
基準位置と二択の作り方
外へ寄り過ぎれば対角が空き、中央へ寄り過ぎればサイドが弱くなります。打点と球質から戻り位置を数十cm単位で最適化します。
配球で走らせる設計
深い対角で下げ、浅いクロスで前に引く二本セットで距離を稼ぎ、三本目で空いた空間を突きます。線上の箱を恐れない姿勢が重要です。
動線の無駄を削る技術
一歩目の向きをコースと一致させ、斜め前後の踏み出しを使います。復帰は円弧ではなく短い直線で戻り、視線は先に次の位置へ移します。
判定と勘違いを図で正す:ライン・ネット・サービス

判定の原則が曖昧だと、安全側へ外す癖がつき攻撃幅が狭まります。ここではラインの扱い、ネット周り、サービス時の細則を図のイメージで統一し、迷いをゼロにします。線上は攻めのために使い、フォルトは手順で予防します。
よくある失敗と回避策
- 線を避けて内へ外す → 触れてもイン。箱の縁を狙う。
- サーブ直前に足が動く → 構え直しは上体と面で行う。
- ネットへ身体が近すぎる → 小さな面操作で距離を保つ。
ミニチェックリスト(判定)
- 着地が線に触れたらインと言えるか。
- サーブ時の足はライン上を踏んでいないか。
- 相手の打球を妨げる位置取りをしていないか。
- 単複で長いサービスラインを混同していないか。
- ネットや支柱への接触を避ける準備があるか。
注意:ダブルスの長いサービスラインは最奥より0.76m手前です。シングルスと混同すると奥狙いを不当に怖がります。
ラインの扱いを攻めに変える
線上±10cmを段階的に狙い、成功率の閾値を70%に設定。到達したら実戦へ投入します。
ネット周りでの接触回避
横振りのワイパーで面が暴れると接触リスクが上がります。直線の小さな面操作で処理し、身体はネットへ寄せ過ぎないようにします。
サービスの細則を習慣化
足の静止→面先行→弾道の住み分け(低く速い/高く深い)をルーティン化。声掛けで確認すると安定します。
図で理解する配球の基準と狙い所
コート図を頭に置きながら、外と内・浅と深の二軸で配球を設計します。相手の重心をずらせるほど線上の箱が使いやすくなり、読み合いでも優位が保てます。安全域と攻め域を切り替える基準を持ちましょう。
比較:安全域と攻め域
- 安全域:線の内側50cmの箱。再現性を優先。
- 攻め域:線上±10cm。姿勢が崩れた瞬間だけ狙う。
手順ステップ:二軸で崩す
- 深い対角で後ろへ下げます。
- 浅いクロスで前へ引き出します。
- 空いた空間(外側/内側)へ三本目を通します。
線上の一点を狙うのではなく、「線上に触れても入る箱」を狙う発想に変えると、攻めと安全の切替が滑らかになります。
同フォーム打ち分けで読みを外す
前振りを共通化し、直前で面の向きだけを変えます。情報を隠すほど相手の初動が遅れ、線上を通す余裕が生まれます。
センターの価値を再評価
センターへ返すと相手の距離が縮み守備が間に合います。無理な外狙いを減らし、崩れた瞬間にのみ角を使います。
浅深の連結で時間を奪う
浅→深、深→浅の連結は前後の振幅を最大化し、戻りを間に合わせません。弾道の高さと着弾箱を固定して再現性を高めます。
練習ドリル:線を使って精度を上げる
理解を技術に変える最短路は測定可能なドリルです。線そのものを課題化し、成功率で管理します。役割を分け、短時間でも成果を可視化できるメニューを提示します。
ベンチマーク早見
- ショートサーブ:短い線越え50cm以内で8/10成功
- ロブサーブ:最奥手前50cm以内で8/10成功
- 対角クリア:サイド線上±60cmで8/10成功
- 浅→深→外:3連続成功を5セット
- ヘアピン:対角5往復ノーミス×3セット
表:線を使う精度ドリル
| ドリル | 狙いの線 | 成功条件 | 回数 |
| ショート箱 | 短い線直後 | 越え50cm以内 | 10本×3 |
| ロブ深さ固定 | 最奥手前 | 50cm以内 | 10本×3 |
| 対角精度 | 内側サイド | ±60cm | 10本×3 |
| 前後連結 | 短い線/奥 | 3本連続 | 5セット |
| ネット往復 | ネット直下 | 5往復 | 3セット |
Q&AミニFAQ
- Q: 線上が怖い。 A: まずは内側10cmの箱から始め、成功率が上がったら段階的に線上へ近づけます。
- Q: 片側に偏る。 A: 図で左右の箱を可視化し、セット内で左右交互に固定します。
- Q: 時間がない。 A: 10本測定→1点修正→10本再測定の短縮ループで十分です。
測定→修正→再測定のループ
10本で現在地を測り、修正点は1つに絞ります。同条件で再測定し、差分だけを評価すると定着が早まります。
線上恐怖の解消
線の内側にマーカーを置き「当てても良い」課題で恐怖を外します。触れてもインの理解が身体感覚に変わります。
弾道と箱の分離管理
弾道(高さ)と箱(着弾)を別々に管理すると、どちらかが崩れても立て直しやすくなります。面は先に、足は静止を基本にします。
まとめ
バドミントンのコートは線で前提が決まる設計です。シングルスは内側サイドライン、サービスは対角で短い線を越え、奥の上限を出さないこと、そしてネット中央が低い前提を角度設計に活かすことを、図のイメージと結びつけて覚えます。
線は敵ではなく入れるための味方です。線上±の箱を狙い、成功率で管理し、安全域と攻め域を切り替えます。寸法と判定が配球と動線に直結する設計に変えると、一本の精度差が主導権へと積み上がり、練習の時間がそのまま得点力に変換されます。


