高校生の部活は上達の伸び幅が大きく、ラケット選びがプレーの方向性を大きく左右します。買い替えの頻度は高くありませんから、最初の一本で外さない設計が大切です。
この記事では体格と筋力、ポジション、練習環境、予算の4軸から選択基準を言語化し、部活の現場でそのまま使えるチェックリストと試打手順、購入後のフィッティングまで順を追って解説します。迷いやすい重量表記(3U/4U/5U)やバランス、シャフトの硬さ、張り(テンション)の関係も高校生向けにわかりやすく整理しました。まずは次の短い要点を押さえてから、章ごとの詳説へ進んでください。
- 体格とスイング速度で重量と硬さを絞り込む
- ポジションでバランスを選び、操作感を合わせる
- 張りは段階的に上げ、痛みやミスの増加で微調整
- 型落ち上位か現行中位でコスパ最適化
- 試打は3本比較・3項目・30球の同条件で
- 購入後はグリップと重心の微調整で仕上げる
バドミントンのラケット選び方高校生向け|スタートアップガイド
まず「当てやすさ」と「振り抜きやすさ」の均衡を設計することが出発点です。体格と筋力、スイング速度、ポジション志向の3要因が、重量・バランス・硬さ・グリップ・張りの各指標にどう効くかを整理し、無駄買いを防ぎます。初心者でも扱える目安と、競技志向へ伸びるための次の一手を併記します。
体格と筋力から重量を決める(3U/4U/5Uの考え方)
一般に3U(約85–89g)は安定感、4U(約80–84g)は操作性、5U(〜79g)は取り回し重視の選択肢です。高校生は成長期で筋力が伸びるため、最初の一本は4U基準が扱いやすく、部活で週数回振る前提なら十分な剛性も得られます。シングルスでクリアが届きにくい、打点が遅れるなら重めへ、面が暴れて当てにくいなら軽めへ微調整しましょう。
バランスの意味:ヘッドヘビー/イーブン/ヘッドライト
ヘッドヘビーは遠心力で伸びのあるクリアやスマッシュが打ちやすく、ラリーの後ろから主導権を握りやすい特性です。イーブンは万能でポジションを固定しない人に向き、ヘッドライトは前衛やレシーブ反応を重視する高校生に相性が良いです。
部活のダブルスが中心ならイーブン〜ライト、シングルスに比重を置くならイーブン〜ヘビーから始めると失敗が少なくなります。
シャフトの硬さとスイング速度の相性
硬いシャフトは入力に対する出力の立ち上がりが速く、速いスイングで威力を引き出せます。遅いスイングではシャフトが働かず球が浅くなりがちです。
高校生の標準は「やや硬め〜中間」。部内での基準球速や打感の好みを把握し、フレックス表記だけでなく実試打の反発と安定を確認しましょう。
グリップサイズと握り方の関係
グリップが太すぎると手首の回内外が出にくく、細すぎると面がブレます。
G5/G6などの表記はメーカー差もあるため、オーバーグリップを一巻きして親指と中指の腹が軽く触れる太さを基準にします。バックハンド主体の前衛志向はやや細め、スマッシュ主体はやや太めが安定しやすい傾向です。
張り(テンション)とストリング入門
テンションは高いほど打球感がシャープでコントロール性が上がる一方、スイートスポットが狭くミスに厳しくなります。
高校生の導入値は20–22lbsから始め、月単位で1–2lbs刻みで調整。ストリングは耐久寄りの太めから入り、切れやすさや音の好みで細めに移行するのが安全です。
注意:重量やテンションは「上を目指すほど高く・重く」ではありません。打点が遅れる、肘や手首に違和感が出る、面が開く回数が増えるなら数値を戻す判断が必要です。
手順ステップ(初回試打の流れ)
1. 4U/イーブン/中間硬さを基準として1本決める。
2. 同条件で3Uまたはヘッドライトを1本追加。
3. クリア20球→ドライブ20球→ネット20球の順で比較。
4. 外れた理由を一言メモ(重い・面が走らない等)。
5. 最後にテンション20/22lbsを同一機で張り比べ。
ミニ用語集
U:ラケット重量区分の目安。
バランス:重心位置。ヘッドヘビー/イーブン/ライト。
フレックス:シャフトの硬さ表記。
テンション:ストリングの張力。
スイートスポット:芯で当たりやすい範囲。
ポジションとプレースタイルで合わせる実戦的選び分け

同じスペックでも、立ち位置と狙う展開で善し悪しは変わります。シングルス志向、ダブルス前衛、ダブルス後衛の三つに分け、ショット選択とリアクション速度の観点から相性を解きます。自分の得点パターンに寄せて道具を整えると、練習が結果に直結します。
シングルス志向:配球と粘りを支える設計
後方からのクリアとドロップで配球し、要所でプッシュやスマッシュを差し込みたい場合、4U〜3Uのイーブン〜ややヘビーが候補です。
硬すぎないシャフトで深さの再現性を高め、テンションは20–22lbsでコントロールを優先。面の安定が得点に直結するため、グリップはやや太めでブレを抑えます。
ダブルス前衛:反応と面操作を最優先
ネット前のプッシュ・ヘアピン・レシーブで主導権を握るなら、4U〜5Uのヘッドライト寄りが軽快です。
短い距離での打ち合いに強く、テンポの速い展開でも手首が利きます。テンションは20〜21lbsから入り、面の暴れが出るなら22lbsまで。グリップは細めで回内外を素早く出せると有利です。
ダブルス後衛:一発と踏ん張りの両立
後衛でのスマッシュやクリアで押し込みたいなら、4U〜3Uのイーブン〜ややヘビー、硬めのシャフトが候補です。
テンションは22lbs前後で弾きと安定の折衷。重すぎてヘッドが落ちると精度が崩れるため、30球の連続スマッシュでフォーム維持ができる範囲に収めます。
比較ブロック(スタイル別の要点)
| シングルス | イーブン〜ややヘビー/中間硬さ/再現性重視 |
| 前衛 | ヘッドライト/軽量/反応速度と面操作 |
| 後衛 | イーブン〜ヘビー/やや硬め/踏ん張りと伸び |
ミニチェックリスト(相性確認)
- 得点パターンは何か(例:前で押す/後ろで沈める)
- 30球でフォームが崩れない重量帯か
- レシーブの一歩目が遅れないバランスか
- ネット前で面を止められる硬さか
- テンション上げ下げで改善余地があるか
事例引用(ダブルス前衛志向の選択)
前は苦手だったが、4Uのヘッドライトに替えたらレシーブの面が間に合う場面が増えた。テンションを21lbsに落として面ブレを抑えたら、ネット前の差し合いで主導権が取りやすくなった。
予算とコスパの見極め:型落ち上位か現行中位か
限られた予算で最大の効果を得るなら、価格帯と設計思想の差を把握しましょう。カーボンの質やフレーム断面、振動吸収の仕組みは価格に反映されますが、練習量や体格次第では現行中位や型落ち上位が最適解になります。
価格帯のざっくり目安と期待値
入門帯(〜1万円台前半)は扱いやすさ重視、中位(1万円台後半〜2万円台前半)は反発と精度のバランス、上位(2万円台中盤〜)は剛性と打球情報量が増えて微差を詰めやすくなります。
高校生は中位〜型落ち上位がもっとも費用対効果が高く、練習量が増えても耐える設計が多いのが利点です。
型落ち上位 vs 現行中位の比較観点
型落ち上位は素材や成型の精度が高く、直線的な球質や耐久で有利なことが多いです。現行中位は最新の打感チューニングが入り、扱いやすい挙動や振動対策に優れます。
迷ったら「現行中位で操作性→慣れたら型落ち上位で伸び」を推奨します。
メーカーごとの傾向をどう読むか
メーカーは設計思想が異なるため、同じ表記でも打感やバランスの出方が違います。口コミだけで決めず、必ず同条件で試打。ラケットの出来不出来は個体差もあるため、重心や振りやすさを自分の言葉で記録して比較しましょう。
価格帯×設計ざっくり比較表
| 帯 | 主な利点 | 留意点 | 推奨層 |
|---|---|---|---|
| 入門 | 扱いやすい/価格低 | 反発控えめ | 始めたばかり |
| 中位 | 反発と精度の両立 | モデル差が大 | 部活の主力 |
| 上位 | 剛性高/情報量多 | 扱いに経験要 | 競技志向 |
| 型落ち | 高性能を安価 | 在庫/保証注意 | 賢く選びたい層 |
よくある失敗と回避策
・上位モデルを重く硬くし過ぎる → 連続打でフォーム崩壊、まずは中位で再現性を確保。
・口コミだけで購入 → 試打条件が異なると再現できない、必ず同テンション同球で比較。
・安さだけで入門帯を継続 → 成長期の出力に合わず、打感の情報量が足りない。
ミニFAQ
Q. 予算が限られる?
A. 型落ち上位を第一候補に。保証と状態を確認し、グリップやストリングに予算を回します。
Q. 2本目はいつ?
A. 大会期の前に同スペックの予備を。テンション差が結果に直結します。
Q. 兄弟で兼用?
A. グリップで太さ調整が利く範囲なら可。重量とバランスは個別最適が無難です。
部活運営の実務:安全・メンテ・備品選定の指針

顧問やキャプテンが押さえると現場が安定する「運営の指標」を整備します。統一の基準を作るとトラブルが減り、練習密度が上がります。備品の選定、張り替え周期、けが予防はチーム全体のパフォーマンスに直結します。
備品の統一基準と管理のコツ
部の共用ラケットは4U/イーブン/中間硬さを基本に揃え、予備は同条件でまとめます。
シャトルやグリップは消耗が早いため、学期ごとの発注テンプレを用意し、誰でも在庫を把握できる表を貼り出します。
張り替えとメンテの周期
週3〜4回の練習なら、テンション維持のため月1回の張替えを目安にします。
フレームの傷やクラックは写真で記録し、試合前にローテーション。グロメットの劣化も合わせて点検します。
けが予防と安全教育
肘・手首・腰の違和感は早期申告をルール化。
ウォームアップとクールダウンのメニューを掲示し、重いラケットや高テンションの無理な使用を禁じます。声かけの型(「前いきます」「任せた」)を共有し、接触事故を減らします。
有序リスト(運営ルーチン)
- 週初めに備品点検と写真記録
- 練習前にテンションとグリップ確認
- 練習後にフレーム傷の共有
- 月末に張替え予定の掲示
- 大会前に予備機を同条件で準備
- 事故や違和感はフォームで振り返り
- 新入生へ安全講習の実施
ミニ統計(目安の数値)
・練習頻度週3以上でテンションは月1で約1–2lbs低下。
・オーバーグリップは平均2–3週で交換。
・フレーム傷の報告と写真管理で破損トラブルが減少傾向。
ベンチマーク早見(部の基準)
・共用:4U/イーブン/中間硬さ/20–21lbs。
・競技志向:3U〜4U/イーブン〜ややヘビー/21–23lbs。
・怪我明け:5U〜4U/ライト/18–20lbsに一時緩和。
購入後のフィッティング:仕上げと習熟ロードマップ
買った後の「仕上げ」で同じラケットでも別物のように扱いやすくなります。グリップ厚と重心の微調整、テンション再現のメモ、4週間の慣らし計画で、体と道具の対話を整えましょう。
グリップ調整と重心チューン
オーバーグリップを1/2重ねで巻くと太さを微調整できます。
エンド側にテープで加重すればヘッドの利きが弱まり、前衛の操作性が上がります。ヘッドが走り過ぎるならオーバーグリップをやや厚く巻き、面の安定を優先します。
テンション再現と記録の工夫
同じショップ・同じ張り機・同じストリングで条件を固定し、気温や打感のメモも残します。
打球音や飛距離の変化を短文で記録すると、次回の依頼が具体になり、再現性が高まります。
4週間の慣らし練計画
第1週はフォームと面出しに集中し、試合は控えめ。第2週はドライブとレシーブのテンポを上げ、第3週にスマッシュ頻度を上げます。
第4週で試合強度にし、違和感があればテンションやグリップに戻って調整します。
無序リスト(仕上げの小技)
- エンドテープで1–2g加重して反応調整
- 親指当たり部分に薄めの段差でトルク付与
- 汗量に合わせて吸汗性グリップへ変更
- 打感が硬い日はストリングを湿らせた布で軽拭き
- 冬場はアップを長めにしテンション据え置き
- 夏はテンションを1lbs下げて面安定
- 試合用と練習用でテンション差を小さく
注意:加重はやり過ぎ禁物。総重量やバランスが変わると保証外になる場合があります。必ず少量から試し、違和感が出たら元に戻してください。
手順ステップ(週次の習熟)
1. 週頭:フォーム動画を10球だけ撮る。
2. 中日:レシーブの安定を20球連続で測る。
3. 週末:試合形式を15分→感想を30秒メモ。
4. 月末:テンション/グリップ/加重の再調整。
試打と購入の実務:店舗/オンラインの最適フロー
失敗しない買い物は「同条件比較」と「返品/保証の理解」から。店舗では試打の段取りを、通販ではスペックの再現性とサポートを確認します。学割や部活割を活用すれば、限られた予算でも質を上げられます。
店舗試打のプロトコル
候補は3本までに絞り、同じテンション・同じ球・同じメニューで比較します。
クリア→ドライブ→ネットの順で20球ずつ、最後に30秒の連続ラリーで疲労時の面安定を確認。良かった点と改善点を一言ずつメモし、次の候補に活かします。
通販での失敗回避:返品・保証・スペック差
返品条件、保証の有無、個体重量の範囲を確認し、できれば実測重量の記載がある店舗を選びます。
ストリング張り上げサービスはテンション値と張り機を明記して依頼し、到着後に打感をチェックして合わなければ初期調整を行います。
学割・部活割とまとめ買いのコツ
同一モデルをチームで揃えると、スペア運用や張替えの再現性が上がります。
グリップやストリングはまとめ買いで単価を抑え、ラケット本体は時期を分散して故障リスクに備えると安心です。
比較ブロック(購入チャネルの向き不向き)
| 実店舗 | 試打可/相談可/価格はやや高め |
| オンライン | 価格柔軟/在庫豊富/試打不可で条件要確認 |
有序リスト(購入チェック)
- 候補3本/条件統一で試打
- 返品/保証/重量範囲を確認
- テンションとストリングを明記して依頼
- 到着後48時間以内に打感確認と写真記録
- 不一致時は初期調整→相談の順で対応
ミニFAQ
Q. 試打できない地域は?
A. 友人や先輩の同条件ラケットを借り、テンションと球を合わせて短時間比較します。
Q. 重量の個体差は?
A. 数グラムの差は体感に影響することも。実測記載や個体選択ができる店舗が安心です。
Q. 到着後に違和感?
A. まずグリップ厚とテンションを微調整。改善がなければ相談または交換ポリシーを確認します。
まとめ
高校生のラケット選びは、体格とスイング速度、ポジション志向、練習量、予算の四つを整合させる作業です。
まずは4U/イーブン/中間硬さ/20–22lbsを基準に、安全に当てやすさと振り抜きの均衡を作ります。シングルス志向なら再現性、ダブルス前衛なら反応、後衛なら踏ん張りと伸びを主眼に調整。
型落ち上位や現行中位でコスパを取り、同条件試打→短文メモ→微調整のサイクルで最適点を見つけます。買って終わりではなく、グリップとテンションの再現性を管理し、月次の習熟計画で道具と体を同期させてください。あなたの一本が、日々の練習をもっと確かな成果へつなげてくれます。


